量子とは(量子用語集など)

以下は、管理者用メモで、理化学研究所さんのプレスリリース(研究結果)ページ(http://www.riken.jp/pr/press/)より抜粋した用語です。





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量子コンピュータ
量子力学における重ね合わせを利用して、超並列計算を実現するコンピュータ。従来のコンピュータでは天文学的な時間のかかる因数分解の問題などを、数時間で解くことができる量子アルゴリズムが開発されており、超高速計算が可能になると考えられている。

量子エラー訂正
雑音に対して極めて敏感な量子コンピュータに生じたエラーを、量子力学的性質を損なうことなく検出し訂正するアルゴリズム。実用的な大規模量子コンピュータを実現するためには必要不可欠と考えられている。

量子揺らぎ
量子力学でいう不確定性原理は、絶対ゼロ度であっても物質の振動が止まらないことを自然に導く。この振動を量子揺らぎという。有限温度では固体の格子振動などのさまざまな揺らぎが優勢であるが、絶対ゼロ度に近づき熱揺らぎを抑制すると、相対的に量子揺らぎの効果が無視できなくなる。

電子スピン
電子が右回りまたは左回りに自転する回転の内部自由度のこと。この回転の向きに応じて、通常上向きまたは下向きの矢印で表される。
電子は、内部にアップとダウンの二つの状態をとるスピン(電子スピン)という自由度を持つ。「電子の自転運動の右回り左回り」とたとえられることがあるが、物体の自転が1回転すると元の状態に戻るのと異なり、2回転して元の状態に戻る。

量子スピン液体
固体中で電子スピンが動かず原子位置にとどまる場合、その物質は磁性(磁石としての性質)を持つ。スピン間には平行、または反平行になろうとする作用があるため、ほとんどの物質でスピンは整列し秩序化する。しかし、量子力学の帰結である電子の波・粒子二重性により、スピンの波動性が強調され、スピン秩序が阻害される場合がある。これを量子スピン液体という。

スピン量子数
粒子に内在するスピン自由度の角運動量の指数のこと。これは1/2の整数倍の値しかとらず、1/2の場合に最も量子揺らぎが大きくなる。

核磁気共鳴法
原子核に磁場をかけると歳差(すりこぎ)運動をする。この回転周期と同じ周期の交流電波を与えると原子核の信号を得ることができ、これを核磁気共鳴法という。歳差運動は原子核の周りの電子の影響を強く受けるため、実際には電子の状態を調べていることになる。医療診断に用いられるMRIは核磁気共鳴法である。

フロンティア分子軌道
分子中で電子が見出される確率が高い領域を分子軌道という。一つの分子の分子軌道は多数あり、エネルギー値と対称性により整理される。これらは、エネルギーの低い順番に電子により占有されていく。分子の性質を決定づけるのは「電子が最後に占有した分子軌道」と「電子に占有されていない分子軌道でエネルギーが最も低いもの」の2つであり、両者の対称性は異なる。この2つをフロンティア分子軌道という。

超伝導状態
超伝導は、物質が臨界温度を超えて冷却されたときに起こる、電気抵抗がゼロになる現象。超伝導状態では、電気がエネルギーを失わずに物質中を流れる。

金属ジチオレン錯体
下図のように、中心金属イオン(下図の場合はPd)に硫黄原子を含む配位子が結合した錯体。一般に、配位子は孤立電子対を持つ原子の集合体(基)を持っており、今の場合、硫黄の孤立電子対を介して金属と配位結合して、錯体を形成する。
電子スピン密度
フロンティア分子軌道を作るために各元素が供出している電子の数のこと。

内部自由度
物質の運動や電磁波に対する応答を特徴づける量のうち、一般には人為的制御が及ばないとされるもの。

量子ドット
電子を空間的に3次元全ての方向に閉じ込めることで運動を制限し、0次元構造としたもの。その性質から人工原子とも呼ばれ、電子を一つずつ出し入れすることができる。

量子ビット
電子スピンの向きなどに符号化された量子情報の最小単位のこと。通常のデジタル回路では「0もしくは1」の2状態に情報が保持されるのに対し、量子ビットでは「0でありかつ1でもある」状態を任意の割合で組み合わせて表現することができ、これを量子力学的な重ね合わせ状態と呼ぶ。このことを表現するために、通常量子ビットの状態は任意の向きの矢印によって表される。

量子非破壊測定
量子系のある量を測定したときに、その測定された量の時間発展に一切の影響を及ぼさないような測定のこと。理想的な量子射影測定ともいえる。量子力学では、測定そのものも物理的な過程として慎重に取り扱う必要があり、通常のほとんどの測定は何らかの形で測定される量に影響を及ぼしてしまう「破壊測定」である。

量子非破壊性
量子系の測定(読み出し)において、測定された量の時間発展に一切の影響を及ぼさず新たなエラーを生じさせない性質のこと。この性質を持つ測定を量子非破壊測定と呼ぶ。

ST量子ビット
二重量子ドット中の二つの電子スピンを用いて実装される量子ビット。全スピン角運動量が0(シングレット、S)および1(トリプレット、T)の状態が、それぞれ量子ビットの0と1に対応する。外部磁場を加えることで、三つあるトリプレット状態のエネルギー縮退を解き、磁場と平行なスピン成分が0の状態のみを量子ビットとして利用する。

電子スピン共鳴
外部磁場を加えると、電子スピンが上向き(磁場と平行)、下向き(磁場と反平行)の状態間にエネルギー差が生じるが、これに対応するマイクロ波を照射することで、電子スピンの反転が起こる共鳴現象のこと。マイクロ波の強度と照射時間を精密に制御することで、電子スピンを任意の向きに回転操作することができる。

射影測定
量子ビットは、0と1(スピンの上向きと下向き)が任意に重ね合わされた状態をとることができるのが大きな特徴であるが、それを測定しようとしたときには重ね合わせが壊され、0か1のいずれかが確率的に得られることになる。この過程を射影測定と呼ぶ。量子非破壊測定はこの射影測定の一種であり、「重ね合わせが壊されない」ということを意味するのではない。

フォノン
半導体結晶中の格子振動を表した準粒子のこと。固体デバイス中では、電子スピンの主要な相互作用相手である。

量子井戸
ある方向の電子の運動を束縛した構造のこと。電子は束縛されていない2次元方向にのみ運動が可能。通常数ナノメートル程度の薄膜を異なる材料で挟むことで構成する。




インピーダンス、特性インピーダンス




交流回路の電圧と電流の比のことをインピーダンスと呼ぶ。直流回路の場合の抵抗に対応し、単位もオームである。交流回路の基本構成要素である、インダクタや静電容量のインピーダンスは周波数に対して依存性を持つ。また、交流信号を伝送する配線のインピーダンスは50オームに設計されていることが多く、このインピーダンスを特性インピーダンスと呼ぶ。







寄生容量
電子回路において、配線など向かい合う導体に電位差が生じた場合などに発生する、設計者が意図しない静電容量のこと。







インダクタ
一般に電線を巻いたコイルによってできており、流れる電流によって形成される磁場にエネルギーを蓄えることができる素子のこと。インダクタのインピーダンスは周波数に比例して大きくなり、静電容量と共に電子回路の基本構成要素となっている。







高周波反射測定法
ある系に高周波を加え、その反射信号を測定することで、対象の系のインピーダンスを測定する方法。本研究では、高周波共振回路のインピーダンスを測定することで、電荷計の伝導度を高速かつ高精度に測定できる。


スピン電荷変換




スピン状態に応じて電荷遷移の有無が生じる現象を利用して、スピンの情報を電荷状態に変換する方法。例えば、二重量子ドットにおいて各ドットに一つずつ電子が入っている場合、これらのスピンが反並行であれば、一つのドットにもう片方のドットから電子が移れるものの、並行の場合はパウリの排他律によって電子の移動が抑制される現象などがある。


電荷計




電荷状態を測定したい対象の量子ドットの近傍に配置した、量子ドットもしくは量子ポイントコンタクトと呼ばれる一次元伝導チャネルなどのこと。電荷計は対象の量子ドットと静電結合しており、その伝導度は周囲の静電環境に敏感となっている。電荷計の伝導度測定によって、対象の量子ドットの単一電子レベルの電荷状態の変化を検出可能。












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